大判例

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最高裁判所第一小法廷 平成7年(オ)2468号 判決

上告人

右訴訟代理人弁護士

竹下義樹

被上告人

Y1

外四名

右五名訴訟代理人弁護士

堀井敏彦

被上告人

Y2

主文

原判決中上告人敗訴部分を破棄する。

前項の部分につき本件を大阪高等裁判所に差し戻す。

理由

上告代理人竹下義樹の上告理由について

一  本件は、亡Aの共同相続人の一人である上告人が、他の共同相続人ないしその相続人である被上告人らがAの相続財産である土地を売却して、その代金を被上告人らのみで分配し、上告人の相続権を侵害したとして、被上告人らに対し不当利得の返還を求め、これに対し、被上告人らが、上告人の請求は相続回復請求権の行使であるとし、同請求権はAの死後二〇年の経過により時効消滅したと主張している訴訟である。

二  原審の確定した事実関係の概要は、次のとおりである。

1  Aは、岐阜県大垣市〈以下省略〉の宅地(以下「従前土地」という。)を所有していたが、右土地は、大垣市を施行者とする土地区画整理事業の対象地となった。

2  Aは、昭和三〇年九月二四日に死亡した。Aの相続人は、妻B、嫡出子であるC及びD並びに非嫡出子である上告人、被上告人Y3、同Y2、E及びFであった。

Bは、昭和四七年一二月一一日に死亡した。 Bの相続人は、養子である被上告人Y4である。

3  大垣市は、昭和五一年二月二七日、土地区画整理登記令二条四号に基づき、Aの共同相続人らに代わって、職権で従前土地につき所有権保存登記手続をしたが、その際、共同相続人らのうち被上告人Y4、同Y3、同Y2、C及びDだけを共有持分権者として上告人、E及びFを脱漏し、その共有持分を、被上告人Y4が九分の三、同Y3及び同Y2が各九分の一、C及びDが各九分の二とした(以下「本件登記」という。)。

4  従前土地は、昭和五一年一〇月二七日付け換地処分により、同所〈以下省略〉の宅地(以下「本件土地」という。)に換地された。その後、Cの持分(九分の二)については被上告人Y5がその全部を、Dの持分(九分の二)については被上告人Y1及び同Y6が九分の一ずつを各相続し、その旨の持分移転登記を了した。

5  被上告人らは、平成三年三月一〇日、本件土地を代金五〇〇二万二〇〇〇円でG外一名に売却し、持分全部移転登記を了し、代金を登記簿上の持分割合に応じて被上告人らのみで分配した。

三  原審は、次のように判断して相続回復請求権の時効消滅を認め、上告人の請求を棄却すべきものとした。

1  相続財産について、共同相続人のうちの数人において自己の本来の持分を超える部分が他の共同相続人の持分に属することを知りながら、又は当該部分についても自己に相続権があると信ぜられるべき合理的な事由がないにもかかわらず、その部分もまた自己の持分に属するものであると称してこれを占有管理している場合には、侵害者である相続人は相続回復請求権の消滅時効を援用して自己に対する侵害の排除の請求を拒むことはできない。

2  侵害者である相続人が侵害部分が他の共同相続人の持分に属することを知っていたかどうか、又は当該部分についても自己に相続持分があるものと信ぜられるべき合理的な事由があったかどうかは、相続権侵害行為がされた時点を基準として判断すべきである。本件においては、昭和五一年二月二七日の本件登記によって上告人の相続権侵害が開始されたものというべきである。

3  被上告人らが侵害部分が上告人の持分に属することを知っていたこと、又は侵害部分についても被上告人らに相続持分があるものと信ぜられるべき合理的な事由がなかったことを認めるに足りる証拠はない。かえって、本件においては被上告人らにおいて積極的に侵害行為をしたものではなく、大垣市の誤った代位登記により結果的に上告人の持分を侵害することとなった経緯やAに関して極めて複雑な相続関係が生じていたことなどにかんがみると、被上告人らにはこの点に関する悪意ないし過失はなかったものと推認される。

四  しかしながら、原審の右三3の判断は、これを是認することができない。その理由は、次のとおりである。

1  共同相続人のうちの一人又は数人が、相続財産のうち自己の本来の相続持分を超える部分について、当該部分の表見相続人として当該部分の真正共同相続人の相続権を否定し、その部分もまた自己の相続持分であると主張してこれを占有管理し、真正共同相続人の相続権を侵害している場合にも民法八八四条は適用される。しかし、真正共同相続人の相続権を侵害している共同相続人が、他に共同相続人がいること、ひいて相続財産のうち自己の本来の持分を超える部分が他の共同相続人の持分に属するものであることを知りながらその部分もまた自己の持分に属するものであると称し、又はその部分についてもその者に相続による持分があるものと信ぜられるべき合理的な事由があるわけではないにもかかわらずその部分もまた自己の持分に属するものであると称し、これを占有管理している場合は、もともと相続回復請求制度の適用が予定されている場合には当たらず、相続回復請求権の消滅時効を援用して真正共同相続人からの侵害の排除の請求を拒むことはできない(最高裁昭和四八年(オ)第八五四号同五三年一二月二〇日大法廷判決・民集三二巻九号一六七四頁)。

2  真正共同相続人の相続権を侵害している共同相続人が他に共同相続人がいることを知っていたかどうか及び本来の持分を超える部分についてもその者に相続による持分があるものと信ぜられるべき合理的な事由があったかどうかは、当該相続権侵害の開始時点を基準として判断すべきである。

そして、相続回復請求権の消滅時効を援用しようとする者は、真正共同相続人の相続権を侵害している共同相続人が、右の相続権侵害の開始時点において、他に共同相続人がいることを知らず、かつ、これを知らなかったことに合理的な事由があったこと(以下「善意かつ合理的事由の存在」という。)を主張立証しなければならないと解すべきである。なお、このことは、真正共同相続人の相続権を侵害している共同相続人において、相続権侵害の事実状態が現に存在すること知っていたかどうか、又はこれを知らなかったことに合理的な事由があったかどうかにかかわりないものというべきである。

3  これを本件について見ると、次のとおりである。

(一)  民法八八四条にいう相続権が侵害されたというためには、侵害者において相続権侵害の意思があることを要せず、客観的に相続権侵害の事実状態が存在すれば足りると解すべきであるから(最高裁昭和三七年(オ)第一二五八号同三九年二月二七日第一小法廷判決・民集一八巻二号三八三頁参照)、本件における上告人の相続権侵害は、大垣市が本件登記手続をしたことにより、本件登記の時に始まったというべきである。

したがって、被上告人らが相続回復請求権の消滅時効を援用するためには、Aの相続人であり、従前地の所有名義人とされた被上告人Y4、同Y3、同Y2、C(被上告人Y5につき)及びD(被上告人Y1及び同Y6につき)について、本件登記の時点における前記の善意かつ合理的事由の存在をそれぞれ主張立証しなければならない。

(二)  原判決は、被上告人らに悪意ないし過失はなかったと判示しているが、上告人と被上告人Y3及び同Y2が両親を同じくすることは証拠上明らかであり、同Y2が上告人と特に親しくしていた事実も認定されていることにかんがみると、右判示にいう悪意ないし過失は、本件登記に上告人の相続権を侵害する部分が存することについての悪意ないし過失、すなわち本件登記が存在することを知っていたこと、又は本件登記の存在を知らなかったことに合理的な事由がなかったことをいうものと解され、前記の善意かつ合理的事由の存在について正当に認定判断しているものとは認められない(原判決は、被上告人Y3及び同Y2については、同被上告人らが本件登記が存在することを知っていたかどうか、又は本件登記の存在を知らなかったことに合理的な事由があったかどうかのみを判断して、右の善意かつ合理的事由の存在について認定判断をしておらず、被上告人Y4については、信義則違反の主張に対する判示部分において、同被上告人が本件登記の存在を知らなかったこと及び上告人の身分関係について正確に分からなかったことを認定しているものの、同被上告人が他の共同相続人である上告人の存在を知らなかったことについての合理的事由の存在を認定判断していない。)。また、被上告人Y5、同Y1及び同Y6については、その被相続人であるC、Dについて右の善意かつ合理的事由の存在を認定判断すべきであるのに、原判決は、これについて何ら認定判断をしていない。

(三)  そうすると、被上告人らによる消滅時効の援用を認めた原審の判断は、民法八八四条の解釈適用を誤ったものというべきであり、その違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は右の趣旨をいうものとして理由があり、原判決中上告人敗訴部分は、破棄を免れない。そして、被上告人らが相続回復請求権の消滅時効の援用をするための要件の存否について更に審理判断させるため、右部分につき本件を原審に差し戻すこととする。

よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官小野幹雄 裁判官遠藤光男 裁判官井嶋一友 裁判官藤井正雄 裁判官大出峻郎)

上告代理人竹下義樹の上告理由

第一 原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違背がある。

一、原判決には、民法第八八四条の解釈・適用を誤った違法がある。

1、原判決は、民法八八四条の二〇年の時効期間について「二〇年の消滅時効の起算点は、相続権侵害が相続開始後二〇年の期間内に行われたか否かにかかわらず、一律に『相続開始の時』と解すべきものである」とする第一審判決の解釈を踏襲している。原判決の解釈は、文理解釈としてはそのとおりであるが、特殊事案への適用を考える場合の解釈としては不合理であり、あるいは同条の適用が妥当しない場合にまで同条を機械的に適用しようとするものである。

2、原判決のように解釈した場合、相続開始から二〇年以上経過した時点で侵害行為がなされた場合を一律に扱い、被侵害者の権利救済を不可能にする。相続権者が自己の相続権を主張しえたにもかかわらず、これを相続開始から二〇年以上にわたり放置した場合なら、原判決の解釈もあながち不当とは言えない。けだし、相続権者は相続権を行使しようと思えば行使しえたという点で、時効の要件としての「権利を行使することを得る時より進行す」に該当するからである。

3、しかし、本件のように相続が開始した時点及び相続開始から二〇年が経過した時点では本件不動産は存在せず、二〇年以上経過した時点で初めて相続財産が現実に存在するに至った場合には、相続権が侵害された場合常に相続回復請求権の消滅時効が働き、被侵害者は民法八八四条によって常に救済されないことになる。しかも、時効の要件としての権利行使の可能性すらなかったのに、消滅時効が完成することになり、時効制度の本質を覆すことにもなる。ましてや、本件のように大垣市によって代位登記されたことを侵害と考えるなら、そのことの矛盾はさらに拡大する。

4、少なくても、本件のような事例においては、民法八八四条はもともと適用されない(妥当しない)と解するべきである。仮に、適用されるとしても、二〇年の時効の起算点は、大垣市による代位登記の時点と解すべきである。

二、原判決には、民法第一条二項及び三項の解釈を誤った違法がある。

1、原判決は、被上告人らが本件不動産を処分した上時効を援用しても信義則違反及び権利濫用にあたらないとしている。しかし、被上告人らが上告人からの相続分の主張及び話し合いの申し入れを無視し、本件不動産を処分したことが信義則に叶っているとすることは著しく公平を失し、そうした被上告人らの時効の援用を認めることは後記最高裁判例に反するものである。

2、被上告人らは、売買契約の後であるにせよ、決済前に上告人から相続分の主張を受けている。その時点で取引を中止することは十分可能であるし、決済しなければならない必然性もない。にもかかわらず、上告人の権利主張を無視し本件不動産を処分したことは不誠実であり、信義に反する行為であることは社会通念上明らかである。

3、上告人の権利主張を無視し、上告人の相続権を侵害されることを知りながら本件不動産を処分した上で時効を援用することが権利濫用でないとするなら、民法第一条三項は適用される余地がないといっても過言ではない。まさに、本件における被上告人らの時効の援用こそが同条同項が適用される典型例である。

三、原判決には、判例違背がある。

1、原判決は、昭和五三年一二月二〇日の最高裁判所大法廷判決の適用に当たり、相続権侵害の有無を知った時点を「事柄の性質上相続権侵害行為がなされた時点を基準として判断すべきものと解する」とする第一審判決の考えを踏襲している。そして、本件においては「控訴人らの相続持分権がいわば被控訴人らに移転されて被控訴人らに帰属したような外観が、被控訴人らのみを相続人とする右大垣市による代位登記によって、控訴人らの相続権侵害が開始されたものというべきである。」として、侵害時点も基本的には第一審判決の考えと同一に立っている。しかし、かかる解釈及び認定は、道理に反し侵害者の主観的要素が入り込む余地のない時点を捉え、しかも実態関係を無視した不当な解釈である。

2、最判昭和五三年一二月二〇日は、相続権侵害における被侵害者の利益保護と侵害者の違法性(悪性)を勘案して相続回復請求権の時効の主張を限定したものと考えられる。上告人は、本件においても同判決が判例として重要な解釈基準となりうることを争うものではない。

3、相続権侵害の時点をどこと捉えるかは本件に関するかぎり重要な問題である。それを大垣市による代位登記の時点と捉えるのか、被控訴人Y4を中心とする被上告人らの本件不動産処分時とみるのか、被控訴人Y4による売得金の分配時とみるかの問題である。本件においては、その実態からして本件不動産の処分時をもって上告人の相続権侵害時とみるべきである。

①大垣市が本件不動産に代位登記をした時点では、上告人の持分は不動産登記簿上確保されなかった。そして、その結果として、被上告人らの登記簿上の持分が法定相続分を上回るものとなったのである。この時点は登記簿上上告人の相続分が侵害されたかのようにみえるが、現実には被上告人らも本件不動産への持分登記の事実を知らず、登記によっても当事者間では権利の侵害の問題は生じていないのである。観念的には代位登記によって上告人の法定相続分が確保されなかったのであるから、その時点をもって相続分の侵害とみれるとしても、それはあくまでも観念的なものであるにすぎない。ましてや当事者間の公平さを確保するために定められる相続分侵害時とするには、その時点は侵害者の悪意や重過失という主観的要素を持ち込む余地のない場面であるから、右最高裁判決のいう侵害時として右時点を捉えることは不当である。原判決は、大垣市による代位登記がなされた時点では被上告人らの行為が介在せず、あるいは被上告人らの意思とは無関係な時点を侵害時としておきながら、外形上あるいは観念的な意味での上告人の相続持分侵害時点を基準として、被上告人らの主観的要件を問題にし、被上告人らに悪意・過失はなかったとしているのである。

②大垣市による代位登記の時点を侵害時とするのであれば、侵害者を被上告人らとみることは無理である。代位登記の時点を侵害時と見て、あえて侵害者を認定しようとするなら、それは大垣市ということにならざるをえない。しかし、大垣市の過失を問題にしても本件の解決には結びつかず、ましてや右最高裁のいう侵害者とは異質であることは間違いない。もちろん、大垣市の代位登記を捉えて上告人の相続権を侵害したのは被上告人らとするのも無理である。

③そうしてみれば、被上告人らが本件不動産に対し自己の持分登記の事実を知り、さらには本件不動産を処分しようとした時点が、本件においては上告人の相続権侵害時点であるとみるほかないのである。その時点で初めて被上告人らの悪意重過失も要素として考慮しうる時点であるからである。

4、本件において、上告人は本件不動産の存在を知るや、直ちに被上告人らの代理人であったH司法書士に上告人の相続分を主張した。そして、同司法書士はそのことを被上告人Y4ないし同Y6に伝えるとともに代理人を辞任した。上告人Xは、さらに被上告人Y4に対し、上告人の相続分の主張と本件不動産処分の中止を申し入れた。しかし、被上告人らは上告人の意思を無視し、本件不動産を処分したのである。そうした事実経過からして、被上告人らが上告人の相続分を侵害することを認識しながら本件不動産を処分し、上告人の相続権を侵害したことは明白である。

5、以上の次第であるから、右最高裁判決に立脚しても、被上告人らの悪意による上告人の相続権侵害は疑う余地はない。したがって、被上告人らには、上告人に対する関係で、民法第八八四条の時効を援用する要件を欠いているとみるべきである。

第二 原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな重要事項について理由に齟齬がある。

一、上告人の損失と被上告人らの利得の直接性

1、原判決は、被上告人らの利得と上告人の損失との間には直接の因果関係はないかのごとく判示した第一審判決を踏襲している。ただ、その論拠は第一審においても、原判決においても、なんら示されていないし、何故因果関係の直接性が否定されるかまでは示していない。

2、本件は大垣市の代位登記によって上告人が法定相続分に基づく持分登記を失い、他方で被上告人らは大垣市の代位登記によって本来の相続分以上の持分権を取得したことは証拠上明らかである。そして、被上告人らが本件不動産(大垣市〈以下省略〉)を売却したことによって上告人が損害を被り、被上告人らが利得したことも明らかである。本件不動産の共有持分登記が被上告人らによってなされたものではないにしても、大垣市の代位登記という一個の法律行為によって、一方で上告人が法定相続分を侵害され、他方で被上告人らが法定相続分を超える持分権を取得したのであるから、上告人の損失と被上告人らの利得との間の因果関係は直接的であることは明白である。

3、不当利得返還請求権における利得と損失との間の因果関係の直接性の要件は、公平の見地から判断されるものである。本件において、被上告人らの利得を上告人の損失に補填しても、当事者間に公平を欠くことはなく、かえって公平の実現そのものというべきである。

二、被上告人らの悪意ないし背信性

1、被上告人ら(その代表者としての被上告人Y4ないし同Y6)は、上告人(その代理人)が相続権を主張していることを遅くとも平成三年三月初旬までに訴外H司法書士を通じて知っていた。そして、被上告人Y4は、その後も通知書によって直接上告人の相続権主張を受け止めておきながらこれを無視した。

2、被上告人Y4の本件不動産の処分は、明らかに上告人からの相続権主張がなされた後のものである。従って、同被上告人らの悪意ないし背信性は明白である。

三、被上告人Y4らの悪意

1、被上告人Y4は、上告人、訴外E及び亡Fが被上告人らの親族であり、被相続人Aの子供であることを知らなかったと主張しており、原判決はその主張事実を認定している。しかし、これは全くのでたらめである。

2、訴外Eは、亡Cが生存中から被上告人Y4と接触があり、少なくとも昭和六〇年までには同被上告人と接触していた。従って、同被上告人は、昭和六〇年以前から異母兄弟としての共同相続人たる訴外Eをよく知っていたのである。勿論、被上告人Y4は、同Y2及び同Y3を知っていた以上、同人らと母親を共通にする上告人の存在も充分認識していたはずである。少なくとも、被上告人Y2及び同Y3が共同相続人としての上告人の存在を知っていたことは明らかである。

3、同被上告人は、極力上告人に事実関係を知らせまいとして行動し、被上告人Y2にも正確な事実を伝えていないのである。被上告人Y2に事実を伝えれば、上告人に遺産の存在が知れると思ったからである。現に、被上告人Y4は遺産である本件土地を、平成三年三月一〇日に売買契約を締結したのであるが、登記簿上の共有者である被上告人Y2にその事実を伝えたのは、契約締結の直前である平成三年二月になってからである。

また、被上告人Y6は、相被上告人Y2から上告人に知らせたことを聞かされ、「困ったなあ」と答えたという。要するに、被上告人Y6らも、上告人が、共同相続人であることを知っていたことは明らかである。

以上、いずれの点よりするも原判決は違法であり、破棄されるべきものである。

以上

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